公立大学法人三重県立看護大学
理事長・学長 吉沢 豊子
「人に寄り添う力」を専門性と社会変革力へと高める
三重県立看護大学は、1997年の開学以来、地域に根ざした看護専門職の育成に力を注ぎ、2027年には30周年という大きな節目を迎えます。これまで本学は、全学生が看護師・保健師の国家試験受験資格を取得できる教育課程を基盤とし、さらに選択制により助産師国家試験受験資格の取得も可能とする体制のもと、質の高い看護専門職を地域に送り出し、三重県の保健・医療・福祉を支える役割を果たしてきたと自負しております。しかし、社会は今、大きな転換期にあります。少子高齢化の進行、医療の高度化・複雑化、南海トラフ地震をはじめとする大規模災害への備え、さらには気候変動や感染症の拡大など、健康を取り巻く課題は多層的かつ地球規模へと広がっています。また、AIやデータサイエンスの進展は、看護実践と教育の在り方そのものを変えつつあります。こうした時代の要請を踏まえ、本学はこれまでの歩みを礎に、資格取得にとどまらない高度な実践力の涵養をさらに深化させ、「未来投資型」の教育へと進化してまいります。未来投資型教育とは、理論と実践を往還する教育研究体制を構築し、地域医療機関や自治体と密接に連携しながら、現実の課題解決に主体的に参画できる人材を育成することです。
本学が目指すのは、科学的思考と倫理観を基盤に、多職種と協働しつつ、政策形成や地域づくりにも貢献できる看護専門職の養成です。そして、地域とともに新たな価値を創造する「地域共創型大学」へと発展していくことです。
その具体的な重点領域として、次の四つを掲げます。
第一に、南海トラフ地震を見据えた災害看護の高度化と、レジリエントな地域モデルの構築。
第二に、気候変動や少子高齢化に対応するプラネタリーヘルスの推進。
第三に、医療現場のリアルワールドデータを活用したエビデンス創出と研究力の強化。
第四に、AI駆動型教育および看護実践の高度化です。
これらは単なる研究テーマではありません。教育・研究・政策提言を一体化させ、地域医療の「知のハブ」として持続可能な社会を支える拠点を形成するための戦略的柱です。学生は実際の地域課題に触れながら学び、研究成果は現場へと還元され、その知見が政策へとつながる――その循環を確立していきます。同時に、私が何よりも大切にしたいのは、看護の本質です。それは「人に寄り添う力」です。本学は、この力を単なる感性にとどめるのではなく、専門性と社会変革力へと高めていきます。人の苦しみを理解し、尊厳を守り、科学的根拠に基づいて最善の支援を行う。その姿勢こそが、これからの時代に求められる看護の姿です。変化の激しい社会においても、自律的に判断し、行動し、他者と協働できる人材を育成すること、それが公立大学として県民の負託に応える道であると考えています。本学は、地域とともに持続可能な未来を創造し続けます。
三重県立看護大学はこれからも、看護の専門性を深化させると同時に、社会の変革を担う力を育む大学として歩み続けます。「人に寄り添う力」を、未来を支える力へと紡ぎながら、次の30年へと挑戦してまいります。今後とも、皆さまのご支援とご協力を賜りますよう、心よりお願い申し上げます。
